百松沢山（思い出多き山）

百松沢山は、札幌近郊の山で札幌と定山渓の中間に位置する山である。 熊の巣窟と言われているところであり、熊に出合ったと云う話を頻繁に聞いていたが兄貴と登ることにした。西野の外れから山にとっついて日帰りするつもりで出かけた。沢を登り、滝を越えて頂上についたのが15時頃。その時間から下山するとなると、１０ｍ程の滝を降りる頃に暗くなりかけて危険と判断した。 　やむなく、山頂でビバーグすることにした。熊の巣窟だが、頂上は危険度はすくないはずだ。熊よけと寒さをしのぐためにたき火をして一晩すごした。 　丁度、中秋の名月が山肌を照らし、遠くに札幌の街の灯りが見えて気分は上々だった。 　翌朝、１０ｍ程の滝を下るのを止めて、定山渓方面に降りることにした。根曲がりだけが鬱そうと生い茂る斜面を、熊よけのため大声を出しながら滑り降りた。幸いにして、熊に合わずに下山できた。 　 　家の近くまで来たとき、母親が向こうから歩いてきた。我々を見てその場にへたり込んでしまった。日帰りのはずが、昼過ぎになっても帰ってこない。しかも熊の巣窟と言われている所に行っているので心配の余り、捜査願いを出しに行くところだったという。 　我々は、のんきなものであったが、親の心配する姿を見て反省した。 　以後、親に心配をかけないように細心の注意を払って山登りをした。

百松沢山にスキーに行きたくなって、西野から登ることにした。スキーとシュラフを担いで途中で、雪洞を掘って仮眠をしてから登るという計画だ。 　夕方から歩き出して、途中で雪洞を掘って寝たが、寝付けなくて結局、夜中の2時頃から行動を開始した。 　カンテラをつけ、スキーを履いて山にとっついたが、暗くて斜面全体が良く見えない。磁石と地図で、この辺りと目星をつけて登り始めたが、急な斜面で苦労した。ジグザグに登り、後は、ひたすら脛下のラッセル。そのうちに明るくなり、日が差し始め綺麗な雪景色が広がった。 　何時間、ラッセルしたか分からないが、後、30分ほどで頂上に着くことは地図から分かった。一人でのラッセルに、かなり疲れていた。頂上に行けないことはないが、午後13時半、雪もチラチラ舞ってきはじめた。一人で行動しているので、余力あるうちに下山することにした。残念だが、やむを得ない。 　下りは楽なもので、スイスイ滑る快感は止められない。15分ほど深雪を下った頃、ばったり一人で登ってくるスキーヤーに出合った。当然のことながら、苦労してラッセルした後を楽々と登ってくるのだ。もう少し、遅く登っていれば、一人でラッセルをしなくて済んだものをと悔しがったが、後の祭り。 　 　真っ白い斜面を一人で滑る事が出来るだけでも、充分満足した。 　思い出に残る百松沢山だったが、写真は、一枚もない。